阿佐ヶ谷住宅
阿佐ヶ谷住宅に行ってきました。
ここは、1958年(昭和33年)竣工の公団の分譲型集合住宅で、全戸数350世帯あります。
そのうち174戸は、前川國男建築設計事務所の設計によるものです。
現在も住民は住んでいますが、取り壊しが決定されていて、今はその時を待つ状態。
正直な感想ですが、こんなに豊かな場所だとは、本当に思ってもいませんでした。
とにかく、豊か。
それは、決して住宅が豪華だというわけではありません。
公団ですから、ごくごく普通の質素な建物です。
でも、住宅のエリア内は緑にあふれ、それらが住民の手によって手入れが行き届いています。
各住戸には、玄関側とベランダ側に庭があります。
小さな庭ですが、されど庭。
トタン・ギャラリーに入った時、住宅内から庭を見ましたが、その小さな庭がとても落ち着きます。
その庭は、今はフェンスをしている家もありますし、フェンスじゃなくても生け垣があったりしますが、物理的に入るのは簡単です。
でも、それを心理的に境界を作っています。
生活感がにじみ出ていて、「これ以上は入っちゃいけない」と感覚的にわかります。
その、公と私の絶妙な境界が、これほどまでにうまく機能している場所は、今はほとんどないと思います。
「質」が、とにかく豊。
お金じゃ買えない価値が、ここにはありました。
ものより、思い出。
住宅は、いくつかのブロックに分かれているようで、それぞれの中心には小さな公園があります。
それらも、物理的な境界はありません。
滑り台、ブランコ、鉄棒、そして自然の芝生。
取り壊しを待つ今は、本来の姿ではないかもしれません。
でも、今よりももっと豊かなコミュニティがあった姿をイメージすることは、今でもできます。
再開発によってセレブな街をつくるのもいいですが、こういった豊かなコミュニティを守り、継承していくことも重要だと思います。
取り壊しを避けることは出来なかったのでしょうか。
今なら、その価値をわかる人は多くいることと思います。
こういうコミュニティこそ、まさにこれから重要なのではないでしょうか。
失われていくこの団地を記憶にとどめようと、くまなく目に焼き付けました。
今は住んでいない住戸も多数ありました。
電気のメーター。
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