shang-hai story-02 3/1-1
朝ホテルを出た後、僕は上海のデザイン関連スポットを見てまわった。夕方になって、今日の観光を終え、スターバックスコーヒーでその後の予定を考えながら寛いだ。
とりあえず今日はホテルに歩きながら帰ろう、そう思い、スタバを後にした。
南京東路を歩いていると、どこからか何か声をかけられた。
振り返ると、そこには女の子二人組がいた。
どうやら上海の女の子らしい。
片言の英語で適当に答えると、すぐに会話がはずんだ。
寒いので歩きながら話していると、便意を感じたので彼女らに言った。
「I Want To Go To Toilet.」
彼女らは爆笑した。
近くの建物に入り、喫茶店のトイレを借りることになった。
「Thank You.」
用をたしてトイレを出ると、彼女たちは喫茶店でお茶していた。
彼女たちはどんどん注文する。
ピーナッツ、ひまわりの種、デザート、コーヒー・・・ねぇねぇ、割り勘でしょ?
そう思いつつも必死で笑顔を作り、久しぶりにありったけの単語を思い出し、電子辞書をひきながら英語で会話をした。
一人は22歳、ライライというらしい。
髪は長く茶髪で、申し訳ないがあまり美人とは言えず、年の割には少しふけている。彼女は北京語しかしゃべれない。
もう一人は18歳、レイレイという名前だ。
学生で4時まで学校があったそうだ。
髪は首くらいまでで、顔はすごい童顔だ。
とても18歳とは思えない。あんた、さばよんでるでしょ。
彼女は英語も少ししゃべれるようで、僕と彼女とが英語で会話をし、それを中国語でライライに訳す、そういう構図だ。
レイレイは言う。
レイレイmeans Jasmine.
僕は電子辞書でJasmineを引く。花言葉は愛嬌。今度は日中辞典で訳して伝える。それをライライに伝え、3人が理解し、笑う。そんなほのぼのとしたコミュニケーションが続いた。
店を出る時、僕はあることに気づいた。
レイレイのジーンズのジッパーが開いている。
女の子のジーンズの社会の窓が開いているのを初めて見た。
これは言うべきか、言わない方が良いのだろうか。
とりあえず言うのは後にして、まずはお店を出よう。
会計は・・・240元!?しかも僕が払うらしい。
てめーら、誰がデザート頼んで良いと言った?あん!?
そう思いつつ、必死で顔が引きつらないようにしてお金を払った。
店を出て、僕はライライにレイレイのジーンズのことを必死に伝えようとした。
しかし、なかなか理解してくれない。
英語だとレイレイとコミュニケーションできる。
でも、本人にこれを言うのはちょっと・・・。
しかもまだ10代だ。
お肌が水をはじくお年頃の女の子に、社会の窓が開いてるよ、なんて俺には言えない。
しかし、ライライはいっこうに理解してくれない。
俺にそれを言わせるのか!?
そう思った瞬間、良い方法を思いついた。
僕は紙にジーンズの絵を描いて絵の中で股間を指さし、ココあいてるよ、と仕草した。
ようやく彼女は理解したらしい。
レイレイのあそこを見る。
そして、爆笑しながらレイレイに言った。
レイレイはマジで赤面した。
あぁ、こっちもすごいドキドキした。
お店を出ると、彼女達はカラオケに行きたいと言い出した。
はぁー?俺歌下手だよ、行っても金無駄だもん、誰が行くか?
しかし、彼女たちは言う。
Karaoke!, Karaoke!!
NOVAのCMで言ってたな、異文化交流。ちょっと上海知りたい。・ ・・魔が差した。
会話が弾んでしまうと警戒心はもう無いに等しい。
ここから、どんどん歯車が狂い始めた。
僕は、彼女たちに先導されるまま建物に入った。
日本でよくあるカラオケボックスとはちょっと違う。
バーみたいな店で、入り口すぐのところがカウンターで奥にボックスがあり、そこに通された。
曲名リストの書いた本を渡された。
俺、絶対歌わないよ。
ライライが一曲目を歌う。
レイレイが日本の歌ののっているページを見せる。
あっ、”いとしのエリー”じゃん。
そういった瞬間、やつはマッハでいとしのエリーの曲番号を打った。
エリー、マイラブ、サムスィン・・・、エリー・・・・。
馬鹿な!?僕は何かに操られているかのように、その後も”涙のキッス”を歌った。
ライライは一人右側で歌っている。
そして、ライライは左側から英語で話しかけてくる。
My Father Is Teacher.
My Mother Is ・・・.(農作物を作っているらしい)
ふぅーん、で?
ライライを見る。
左手薬指に指輪をはめている。
おまえ結婚してんの?
結婚予定の彼がいるの。
レイレイを見る。
私彼氏いないの。
だ、だ、だから?
・ ・・
・ ・・
トイレ行きたい?
あ、行きたかったんだ♪どこどこ?
じゃ、一緒に行こう?
用を済まして出ると、レイレイがいない。
部屋に戻ったのかな?
すると、後ろから
わっ
うぉっ!?
驚いた?
キャハハッ☆
部屋に戻ると、グラスが増えていた。
だから、今度こそ割り勘だって!
ごめんね、あんまり歌えるのないし、俺学生だから金無いの。
それに、昨日来てあと3日上海いるから、あまりここで金使いたくないの。
だからそろそろ出よう?
じゃ、お酒残ってるし、乾杯しよっ。
しょうがないないなー。
かんぱーい。
まだ酒あんの?
かんぱーい。
じゃ、勘定ね。
お姉さんが入ってくた。
3000元です。
はぁ!?
これ明細ね。
ウイスキー1960元?
酔いが一気に覚めて、急に冷や汗が出てきた。
どうする、どうする、落ち着け、落ち着け高坂!
なんで、この金額おかしいじゃん。
怖そうなおねえが日本語で言った。
ここにウイスキー140元ってちゃんと書いてあるでしょ。
あなたがおかしいね。
うちの店では一杯頼むと2杯分の量入れることになっているから、280元ね。
あなた7杯頼んだから、これはおかしくない。
どうするの?
今お金無いならカードでも日本円でもいいよ。
カード!?やばい、カードはやばい。
僕はこっそり財布を出し、カードをコートのポケットに隠した。
(今思えば、よくその仕草を疑問に思われなかったと思う。)
ちょっと待て、ちょっと話し合うから出てってくれ。
レイレイ、ライライ、どうするよ?
・ ・・。
レイレイ:私カードある、これに1000元入ってる。
でも、これはお父さんが私に勉学のためにくれたお金なの。
ガチャ
さあ、どうするの。
あなたがた2人で半分半分しなよ。
(なぜだろう、3人いるのに、なぜ僕とレイレイの2人で半々払えということに疑問を感じなかったのだろう。ライライはなぜ払わないことになっているの?)
しかし、僕の頭はそれどころではない。
とりあえず手持ちの中国元を出す。
足りない。
カード本当にないの?
ちょっと財布見せて。
僕の財布をとり、カードを全部取り確認する。
かわいそうだから30元は返してあげる。
残りは日本円でも良いよ。
1万円無い?
僕は空港で換金しないで残していた1万円を差し出した。
じゃ、残りはレイレイのカードで♪
どうやら話はまとまったらしい。
カウンターに行き、レイレイがカードの手続きをしているようだ。
ライライ:早く出よう
(ここで領収書をもらうべきだった)
・ ・・上海で仕事をしている知り合いに早く電話せねば!
一刻の猶予もない、早く助けを求めなければ!
とりあえず彼に電話したい、だから公衆電話を探しに行こう。
店を出て歩いていると、途中ライライは靴屋で安そうな靴を発見したらしく、商品を見始めた。
おまえ、おまえこのやろー、こんな状況でよくもこんなことできるな・・・。
さっ、行くぞ。
僕らは南京東路を西に向かって歩き出した。
公衆電話は全部カード式だった。
探していると、日本人らしき女の子2人組が歩いてきた。
あのー、日本人ですか?
あっ、そうですけど。
あのー、すみません、さっきカラオケ屋に行ってぼったくりにあいまして・・・
状況を説明し、知り合いに電話したいことを告げると、大きいホテルに行けば大丈夫じゃないかと言う。
そして、一緒に少し歩くとホテルがあった。
気が付くと、レイレイ、ライライの姿はなかった。
なんでいなくなったんだ。おかしい。
しかし、そんなこと言ってる場合じゃない。
ホテルに入ってロビーに行き、状況を説明しようとすると、女の子の一人が北京語でホテルの人に話した。
従業員は電話をかけてくれた。
あ、もしもし、高坂です。
あのーいきなりですみませんが・・・
(やったー、つながったー。)
状況を説明すると、自分はまだ仕事中だからとりあえず会社に来てもらって、仕事が終わったら今夜は私の家に行きましょう、ただ、今手持ちが30元だとそこからタクシーのお金が足りないかもしれないから、とりあえずタクシー乗って、足りなければ運転手に待ってもらって私を呼んで、ということだった。
なんと頼もしい。
彼は私の一つ年下である。
僕は・・・なんと情けない。
女の子2人組に電話の内容を伝えると、一緒にタクシーを探してくれるという。なんていい人達だ。
そして、僕はタクシーに乗り女の子に深々と頭を下げ、運転手に彼の名刺を見せ、住所を指さした。
ココ行って、お願いだから、早くっ。
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