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2014-04-10

銀座ウエストのひみつ

銀座ウエストのひみつ
木村衣有子
京阪神エルマガジン社

美意識を感じる1冊。読み終わっての第一印象です。
それは、「銀座ウエスト」という会社やお店に対してと、この本そのものに対しての両方に対して。

ウエストは1947年に開店した銀座の老舗洋菓子店。
銀座や青山等に喫茶室があるほか、洋菓子の販売もしていて、特にリーフパイやドライケーキが有名。
というのは、ウエストのこと自体、恥ずかしながらこの本ではじめて知ったこと。
約70年という長い歴史を持ち、創業当時の伝統をずっと守ってきたようなモダンな印象を受けたけれど、読み進めるにつれ、そうでもないとわかります。
値段もやや高めなようなので、パッケージ、内装等、様々なものにこだわってお金をかけて作ったり選んでいるかというと、それもまたそうでもない。
こだわってお金をかけるものはかける、かけないものはかけない。
それでも一貫して「らしさ」を感じるのは、そこに美意識があるからだと気付きます。
そういえば、社是は「真摯」。
本を読み進めると、「こだわり」が「頑固」に感じられないのも、きっとウエストの真摯な美意識あってのことなのでしょう。

この本、本そのものからも美意識が感じられたのも印象的。
写真は透明感があるものも多いし、白を基調とした体裁だからかなぁと思ったけれど、必ずしもそれだけではない。
なぜかしらと本を眺めて考えたところ、本の構成や文章が自然な流れで展開していくし、それを本の体裁(デザイン)が、より良くしているのだろう、というのが自分の結論。
構成は三つの章立てがされていて、その間にカラー写真のページが挟んであるのも読みやすい。
大きく見出し等が書かれているわけでもないし、途中でインタビュー記事もあるのに、自然な流れで話しが展開するのも、違和感無くずるずる読み進めてしまう。
読み終えると、文章や体裁も含めて、本そのものもウエストらしくも感じてくる。
そう思うと、所々にスパイスのきいた木村さんの文体や文章構成も流石。
最後に、ウエストの公式Twitterから選んだつぶやきを掲載しているのも、Twitterでの情報発信も多い木村さんらしくも思える。
そしてその文章を生かしつつ、ウエストらしい空気感でまとめている装丁も素晴らしい。
そういえば、装丁のアートディレクションはデザイナーの有山達也さんなのだそう。
有山さんと言えば「ku:nel」(マガジンハウス)や「雲のうえ」(北九州市)等のお仕事もされている方。
空気感をしっかり読み取って、しずかに表現できる方なんですね。

色味はあまり無いかもしれないけれど、全体を通して品を感じる美しい一冊。
時代の変化のなかで、らしくありつつも、皆で変化することについて考えさせてくれます。

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