shang-hai story 03 3/1-2

タクシーは彼の会社に向かい走り出し、22元で着いた。


タクシーは彼の会社に向かい走り出し、22元で着いた。
車を降りて前の建物の住所を見ると、名刺に書いてある住所と一緒だった。
すみませーん。
弱々しく言うと、奥から中国人が出てきて門を開けてくれた。
そして、奥に通され2階だとジェスチャーした。
ピンポーン。
高坂です。
あ、どうぞどうぞ。
お久しぶりです。そして、どうもすみません。
そこには小さな小さな日本があった。
僕の心の中には、事件に巻き込まれた惨めな気持ちと安堵の気持ちで、すごく複雑だった。
そして、少し半べそ状態だった。
彼と彼の上司に状況を説明した。
じゃ、始末書でも書いてもらおうか、そんな冗談を上司に言われた。まんざら冗談でも無かったかもしれない。
始末書はどうにか書かなくてすみ、僕はテレビのある休憩場所で仕事が終わるまで待つことになった。
テレビではNHK BSの放送が流れていた。
日本語の放送だ。
昨日の朝まで日本にいたのに、すごく日本が恋しかった。
早く日本に帰りたい。
お母さーん。
疲れたのだろう、僕はうなだれるように頭を抱え、次第に意識が薄れていった。
何時くらいだろうか、彼が僕に声をかけてくれた。
晩飯食べました?
いや、まだです。
じゃ、行こうか。
会社を出ると近くのラーメン屋に行った。
上海ではよく見かけるようなお店で、店頭に冷蔵庫があり、その中に様々な具材が串に刺さって置かれていた。
それを客が選んでとり、店員に渡すとスープの入った鍋に具と面を一緒に入れて、ラーメンを作る。
僕も注文し、会社に持ち帰って食べた。
袋から出し、一口目を口に入れた。
・ ・・。
おごってもらっておきながら、お世辞にもうまいともまずいとも何とも言えない。
たぶん、中国人には普通にうまいだろうが、僕の味覚には中国独特のスパイスがあわないようだ。
音をできるだけ立てないように食べた。
その光景は、警察署の取調室のようだった。
カツ丼、食うか?
涙が落ちそうになる。
あったかい。
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12時過ぎだろうか、ようやく帰ることになった。途中スーパーに寄り、飲み物を買ってもらった。スプライトがある。
日本ではもうコカコーラのスプライトは見かけないが、上海では何と3種類もある。
僕は、興味から一番やばそうなのを選んだ。赤いパッケージ。Fireとか書いてる。スーパーを出て、さらに家路を急いだ。
彼の住んでいるマンションはすごい高層だが、結構古かった。
おじゃましまーす。
部屋の灯りをつけると、彼の彼女が出迎えてくれた。
かわいいかわいい雌の猫である。
噂には聞いていたが、すごくかわいい。
傷ついた僕の心は少し癒された。
おまえだけは僕を見捨てないでくれよ。
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畳がしいてある客間に通された。
そこには小さなジャポンがあった。
そして、彼女が入ってきた。
にゃー。
一緒にいてくれるの?
そう思った瞬間、彼女はそっぽを向く。
ちょっと待って、ねぇ、そう思うと、時たまこっちを振り返る。
あっちこっち歩き回り、物陰に隠れる。
しかし、時折半分だけ姿を見せ、こちらを見る。
なんてかわいいんだ。
この子は男心をちゃんとわかっている。
胸がきゅんとした。
僕と付き合って下さい。
彼女はそっぽを向いた。
きっと、ぼられるような男はごめんだわ、そう思ったに違いない。
僕はスプライトのキャップを開け、おもむろに口に近づけた。
ゴクッ、ゴクッ。
何だ、この味は。
そうだ、さっき食べたラーメンに使われている中国独特のスパイスがきいてるんだ。
Fireというのはスパイスのことで、どこか控えめにそのスパイスがきいている。
スパイスって刺激的なはずなのに、その刺激が薄く、飲みにくいわけでもない。
微妙、その表現が一番あっているかもしれない。
彼はまだ仕事が残っているからと言って、リビングのテーブルで仕事をしていた。
僕は、彼女とともに部屋でくつろぎ、次第に夢の世界へと行った。
悪夢のような、長い長い一日がようやく幕を閉じた。


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