shang-hai story 04 3/2

6時に携帯の目覚ましで起床した。


この日の朝は静かだった。
昨日、あんな事があったのがうそのようだった。
喉が渇いている。
スプライトを口に入れる。
うっ、そうだ、ここは上海、昨日・・・。
スプライトのほのかなスパイスが僕を現実の世界へと押し戻した。
そうしているうちに、彼も起きたようだ。
朝は弱くてね。
(いや、そんなことないでしょ。弱くてもあなたはさわやかです。)
とりあえず、1500元あればいいかな。
いやいや、そんなに借りても収入無いからダメですよ。
1000元(14500円くらい)で。
マンションを出ると、彼は自転車にまたがり仕事へと行った。
僕は少し歩き、タクシーに乗ってホテルへと戻った。
ホテルのリコンファームの電話もどうにかうまく済ませ、今日の予定を考えた。
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ぼられたわけだが・・・やはり世間体が気になった。
この期におよび、僕はやっぱり見栄っ張りだった。
バンド(外灘)の方を歩きながら豫園商場に行き、お土産を買うことにした。
バンドには多くの観光客がいた。
ほとんどが中国人と思われる。
香港とか中国の他の地域の観光客もいただろうが、日本人はあまり見受けられなかった。
バンドエリアを過ぎ、さらに歩くと、町並みが観光ガイドブックに載っている写真と似てきた。
目的の地は近いぞ、急げ。
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豫園のエリアの中に入り、お土産を物色し始めた。
飯屋が並んでいるところに来ると、すごく長い列のできている店があった。
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南翔饅斗店(ナンシャン・マントウディエン)という、雑誌に紹介される有名店らしい。
その時は、そうとは知らずに並んだ。
待つこと30〜40分。ようやく買えた。
豚肉入りの小籠包が14個で8元(120円)。
一人でこの量どうするよ。
そう思いつつ、一つほおばってみた。
うまかった。これが、今回の中で一番うまい食べ物だった。
半端じゃなかった。
肉厚の皮と中に入っている豚肉の食感がおりなすハーモニーが至福の喜びを与え、醤油の味と豚肉の肉汁が絡み合い、絶妙な味を作り出す。
しばらくの間、僕はそのうまさのあまり放心状態になった。
そして、我を取り戻すと2個目、3個目と箸を進めた。
美味しかったが、やっぱり一人で14個は少し多かった。
最後は少しおなかが苦しかった。
小籠包を食べた後、僕は土産物の物色を再開した。
これは兄、これはバイト先、どんどん物色する。
値切るが、どんどん金がなくなる。
買い物をしていると、一人のおじさんが日本語で話しかけてきた。
彼はかつて日本で旭硝子という会社で仕事をしていたことがあるという。
警戒しながらも少し話をしてみた。
自分が怪しいものではないことを言いたいらしく、日本人の知り合いの名刺を見せた。
話をしていてやばそうだったら彼から離れよう、そう思い、とりあえず座って話をすることにした。
彼が言うには、僕の買い方はへたらしい。
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例えば上の瓶入れ。
最初20元(290円)と言ってきたので、僕は値切って10元(145円)で買った。
しかし、彼はこれを3元(45円)で買えるところを知っているという。
・ ・・僕は言葉を失った。
でも、日本人の感覚からしたら、半額で買えたらそれで満足しそうである。
しかも、半額しか値切れなかったのが下手だとしても、所詮100円しか違わないじゃん、そんな気もした。
しかし、これは偽物のシルクだし手作りではないと言う。
また、日本とは物価が違う。だから、それ相応の金額を支払うのは当然で、多く払うのはおかしい。そう考えるとこれを3元まで値切るのは正当である、だそうだ。
それはそうかもしれない。
もし、本当は3元程度の価値だとしても、日本人の多くがこれに10元のお金を支払ったら、中国人もこれが日本人には高く売れるとわかる。
それ相応のお金以上を支払いおいしい思いをさせていてはよろしくないのではないか。
そうは思えど、それぞれの製品の適正価格がわからない。
だから、やっぱり初めてなのにあれを3元まで値切るのは難しい、そう思った。
また、せっかくなので昨日のぼったくりの話を彼にしてみた。
すると、彼はそれは本当にぼったくりだったと言った。
その女の子のどっちかが店の関係者の親戚か何かで、そういうのは日本のぼったくりの店と同じだそうだ。
そして、日本円の2万円は上海の一般の人の一ヶ月分の収入になるとか、様々なことを言った。
そして、日本領事館に電話して警察に被害届を出したか、店で領収書をもらったか聞いた。
僕は、領収書をもらっていなかったことにこの時に初めて気が付いた。
一通り話が終わると、彼はどこかに去っていった。
何者だったんだ。
その後再び豫園を徘徊していると、前から日本人らしき女の子が二人歩いてきた。
見覚えがある。昨日ぼったくられた後に南京東路で出会った人たちだ。なんという偶然だろう。
あっ、昨日はどうも。どうにか大丈夫でした。ありがとうございました。
この人達に自分の無事を伝えられて良かった。
神様ありがとう。
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あたりは暗くなり始めていた。
イルミネーションがロマンチックだ。
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お土産を探していると、ある店が目にとまった。
1個60元のメモ用紙だった。
値引き交渉をしていると、日本人の女の子が何人か店に入ってきた。
話しかけてみると意外にも会話が弾み、自然と3人で値引き交渉を始めていた。
3対1で圧倒的に店員が押されている。
女の子はすごい。
この延長線上におばさんがあるのか。
若い頃から値切るのは女の得意分野なのかもしれない。
しかし、値切る、値切る、値切る。
僕もその中に加わる。
「みんなで買うから安くしてよ」作戦。
これいくら、これいくら、これいくら、みんなでそれぞれが欲しいものの値段を聞く。
店員がそれぞれいくらか答える。
もう一周する。
これいくら、これいくら、これいくら。
店員が答える。
しかし、さっきは○○元って言ったよ。高くなってるよ。
そう言う。
時折お姉さんきれい、そうおだてる。
小柳ルミ子似の美人の店員さんは嬉しそうな顔をする。
うまい、こうやって値切るのか!?
僕もいくらと聞いてみる。
2個で80元。
もう一声。
75元。
さらにもう一声。
無理。
さすがに一つ60元を2個で75元が限界らしい。
僕もそれで納得した。
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一人の女の子が悩んでいる。
パンダの雄、雌2対でひと組の抱き合ったポーズをしたぬいぐるみだ。
それぞれを引き離すと間にひもがあり、
「I Love You」と言いながらひもが巻かれてくっついていく。
もう一回やる。
「I Love You」
結局それも35元まで値切り、店員となぜか記念写真を撮り、店を後にした。
彼女たちは明治大学の学生で、卒業旅行で来ていると言う。
友達とは別行動をしていて、待ち合わせまで暇らしい。
日本では絶対しないのに、よっぽど前日のことがこたえて疲れていたのだろう。
僕は思いきって夕食を誘ってみた。
意外にも答えはYesだった。
彼女たちに連れられて、マックでお茶をした。
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豫園エリアの南西の角地の建物の地下のマックに行った。
彼女たちは3人ともバナナパイを頼んだ。
それが目当てだったらしい。
僕はアップルパイとホットコーヒーを頼んだ。
ホットコーヒーが異様にでかい。
砂糖もミルクも異様にでかい。このサイズ、あり得ない。
ほんのわずかな幸せの後、彼女たちと別れた。
純粋そうで良い人達だった。
一人になると、急に寂しくなった。
僕はタクシーに乗りホテルに向かった。
ホテルで荷物を置き、僕は近くで晩飯を済ませて戻ると、ロビーで何か口論していた。
口論しているのは日本人男性だった。
もう60歳を過ぎていそうだ。
彼は日本語で口論しているが、ホテルのフロントの女の従業員は理解できない。
おじさんは毛布をもう一枚貸して欲しいのに貸してくれない、と怒っていた。
無駄だとあきらめたらしく、彼は部屋に向かった。
エレベーターの中で、僕は自分の部屋にある毛布を貸すと伝えた。
毛布を借りに来たとき、手にいちごを3個とペットボトル入りのグレープフルーツジュースを持っていた。
これどうぞ。
もらってちょうだい。
僕はありがたくいただいた。
しばらくして水を買いに部屋を出た。
フロントで彼らに僕の部屋の毛布を貸したのでもう大丈夫、と英語と中国語を交えて伝えた。
今回の旅で僕はホテルのフロントの従業員にもだいぶ迷惑をかけている。
僕は何か彼らのためにしたかったのだろう。
話を終えると、フロントの女の子はニコッと笑った。
部屋に戻り、ドアを開けた。
ほんのりイチゴのにおいが漂っている。
そして、頂いたイチゴをほおばった。
甘い。
昨日の夜とは違い、今日の夜はとっても甘かった。


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