nextmaruni
先日、西麻布で行われている【nextmaruni 12Chairs】東京展に行ってきました。
会場となったGallery le bainは、ホームページを見るとわかりますが、昨年末からたくさんおもしろいデザインの展示を行っています。
今年の初めにはRoss Lovegrove展が行われるなど、ひょっとすると、現在関東のデザインスポットでかなり質が高くておもしろい展覧会を行っているギャラリーかもしれません。
今回のnextmaruniの展示ですが、今年のミラノサローネレポートで各メディアに大きく取り上げられているので、そちらをご覧下さい。
室内の最新号(2005.7)では、エンツォ・マーリ氏×飛騨産業のプロジェクトと併せて大きく取り上げていて、内容も深いところまで取材していておもしろいです。
このHPでは、実際私が見て座った感想を中心にお伝えします。
まず、50音順でAlbert Medaさんのから。
メダ氏は日本の建具のひとつである連子に惹かれ、連子のような背と座を持った椅子を提案しています。
そして、その格子は楕円状で、身体に触れたときのあたり具合がとても優しいです。
実際座ってみると、この格子が音を立ててきしむような不思議な感じがすると共に、木が柔らかくしなり、その優しさを感じられます。
また、陰の美しさは類を見ないほど美しいです。
次にAzumiさんの椅子です。
彼らは日本の美意識の中に配慮と気配りが行き届いていることに美意識を感じ、見た目のシンプルさからは想像できないほどの快適さを感じられる椅子を提案しています。
また、12人のデザイナーの中で、唯一マルニ木工が持つ生産装置から発想している点も注目すべき点です。
見た感じその座面が柔らかくて結構沈むと思っていましたが、実際座ってみると、ほどよい優しさで身体を受け止めてくれます。
微々たる違いですが、今まで座った椅子の中では、もしかしたらこういう座り心地の椅子は無いかもしれません。
Harri Koskinenさんの椅子は、その座面が少し浮いた感じに見えるところが特徴。
座り心地も悪くはないですが、少し離れて見たときの、その構成的でディテールの調和がとても美しく、ため息が出ます。
Jasper Morrisonさんの椅子は、自分がそれまでに接したすべての場所、モノ、コトが自分のデザインには反映されており、その中には当然日本的な感性も含まれる、と言っています。
そして、デザインはノーマルなものであり、室内の雰囲気を壊さないもの、とも言っています。
座ってみて、この中でいちばん座り心地が良いと感じたのがこの椅子です。
おしりのあたりを優しく支えていて、座面と背もたれの丸みがとてもうまいと感じました。
この椅子に僕が日本らしさを感じたかは微妙ですが、フォルムの美しさと機能性が両方高いレベルで備わっていて、さらにそれらが調和しており、さすがだ、と思いました。
植木莞爾さんの椅子ですが、はっきり言っていちばんこの12脚の中で地味、というか印象が薄いのです。
それもそのはず、子どもの頃よく遊んだお寺の濡れ縁の敷き板が今回のイメージソースになっているそうです。
年月を経て、汚れや傷までも味わいと感じられるように、材料もナラの無垢材を利用しているとのこと。
この椅子は、制作者の意図をとてもよく反映したものだと言えます。
この椅子を見て、田舎の小さな小学校の椅子を連想するのは僕だけではないはず。
12脚の中でいちばんアーティスティックな椅子を製作したのが妹島和代さん。
どう見ても、背もたれはうさぎの耳です。
正直なところ、この椅子は座り心地が悪いと思ってました。
だから、会場に行って一番最初にこの椅子に座りました。
そしたらそしたら、意外に良い。
僕の背中を、うさ子ちゃんの耳が両サイドから優しくガードしてくれたのです。
座面もかなりちっちゃい。でも、不思議と座り心地も良い。
今回いちばんの不思議でした。
次に、黒川雅之さんの椅子。
黒川さんのテーマは「西洋と日本の二つの文化の葛藤」。
壮大です。
この椅子に座るまで、この不思議な背もたれが気になっていました。
背中痛くないか疑問だったのですが、そこはさすがでした。
なぜか背中にフィットする。そこには黒川マジックが潜んでました。
また、今回のプロジェクトのプロデューサーも兼ねているせいか、座面にポリカーボネートを使ったものも作るなどしていました。
Micheke De Lucchiの椅子は、唯一折りたたみができるのが特徴。
「Qui e la(クイ エ ラ)」という名には、ここでも、そこでも、お好きに置いて使って下さいという意味を込めているそう。
簡単に折りたたんで移動でき、且つ折りたたみだからといって決して座り心地が悪くならないようにしたという。
実際この椅子は美しく、折りたたみの機能もすばらしいばかりではなく、座り心地も決して折りたたみ椅子だと感じさせないほど良かった。
深澤さんの椅子は、これだけ深澤デザインがあふれた今、やっぱりこの椅子も彼らしいと感じさせます。
そして、シンプルで美しくもありながら、普通。どこかで見たような、もうすでにこのような椅子さえあると思わせるデザイン。
この椅子、脚の太さが一定と思いきや、下の方が2ミリくらい細くなっているそうです。
実際そこを注意して見たのですが、わかりません。僕はまだまだ凡人でした。
深澤さんは家具のデザインはまだまだ少ないらしいですが、この椅子を見る限りそうは思えません。
座り心地も、他の椅子デザインの経験豊かなデザイナーのものに全然ひけをとっていませんでした。
内田繁さんの椅子は、壊れる寸前の美しさをこの椅子に表現したという。
そして、椅子の原型をデザインしようと考え、木をより美しく強調するために脚を細くし、その強度に耐えうるために鉄を使用したそうです。
内田さんのデザインは、日本の美意識をその根底に潜ませ、デザインを行っている優れたデザイナーですが、まだまだ若造の僕には深すぎて、わからない部分があります。
ただ、この椅子からは不思議な存在感を感じます。
次に、八木保さんの椅子です。
木の質感、あたたかさ、柔らかさと堅さ、香り、軽さのような特質を、寄せ木、曲げ木、組み木などの様々な木の加工技術で表現したそうです。
この八木さんは主にグラフィックの方ですが、全然プロダクトデザイナーにひけをとらない、すばらしい椅子だと思います。
そのできばえは、どことなくプロダクトデザイナーっぽくなく、平面的な感じを受けます。
最後にSean Yooさんですが、この方は今回の12人の中で、唯一コンペで選ばれた方。
彼は日本の美学に配慮と調和の重視を見て、それを脚部と背もたれをを一体化させて連続的な部分としてつなぐことで表現している。
この椅子は、その制作者の意図が大変よく表現されていて、横から見たときの脚と背の連続性がすごく美しい。
ただ座り心地の点では、他のプロのデザイナーとの差がわずかながら顕著に感じられた。
このプロジェクトは質が高いです。
昨日と美しさを兼ね備えたすばらしいデザインばかりです。
もう次回のコンペは始まってます。
今後も毎年12脚ずつシリーズを作り、100脚くらいになるまでこの試みは続くそうです。
本当、今後も楽しみなプロジェクトです。
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