西沢立衛氏講演会
久々に講演会を聞いたので、メモ用にも記事を更新します。
講演は、建築家 西沢立衛氏。
演題は、近作につて -環境と建築-
まず、設計事務所の紹介から。
事務所はふたつに所属しており、それぞれ西沢立衛建築設計事務所、SANAA。
ふたつの理由は、妹島さんの事務所から独立する際に共同でのコンペの提案があったため、共同事務所としてSANAAを設立し、現在に至っているそう。
事務所の位置づけとして、SANAAは主に海外のコンペ、国内の仕事はそれぞれがそれぞれの事務所でやっているとのこと。
氏の興味はふたつで、
・建築は人間が使うもの
・環境との関係をつくる(環境との共生)
建築は、完成すると古い環境にプラスされ、そして新しい環境ができるので、スケール的に山や川に近い。人がどのように使うか、そして環境との関係性から建築を考えている。
十和田市現代美術館
十和田市現代美術館は、もともとは美術館がある官庁通りに空き地ができ始め、連続する景観に穴が空くということから、官庁街一帯をアートの街にするという構想ができ、ナンジョウアンドアソシエイツも関わってきており、その流れで美術館のコンペが行われた。
考えたのは、通り全体を美術館にし、アートプログラムが各地に並んでいき、美術館はその全体の中で屋内空間という位置づけにした。
その際、独立した建築ではなく、通り全体が美術館の中のひとつとなり、通りや街の活動とどのように連続できるかを考えた。
また、作品の永久展示がコンペ条件にあり、巨大な建築だと外から分からず、外と別れてしまうので、作品ごとに小部屋を並べ、それにより建築としての解放感を出した。
作品がバラバラになるメリットを活かすため、ひと部屋ひとアーティストという条件を付け、作品に合わせて窓の位置などを決めていった。
このようにして配置していくことで、従来の美術館では順路はキュレーターが作るが、この美術館では訪れたひとが順路を作るものとなった。
また、現代美術には、作品や作家によって閉じたり開いたりするものがあるが、それも作品の個性に合わせ、作品の位置も決めた。
また、チケット売り場やカフェ、階段等にも機能に合った作品があり、我々の生活の一部に美術作品があることを感じられるものとなった。
このようにして、作品と建築がお互いに影響を与え合っており、部屋を移動する間官庁街を見て移動できる。
カフェの大きな窓の向きも道路の向かい側の屋外展示も意識して作ったものであり、美術館は通りの一部の東屋やショーケース的なもので、通りという都市空間につながるような都市の連続性(地続き感)を持っている。
このようにして、都市と現代美術、そして建築が一緒にできている。
講演はその後、豊島美術館、サーペンタインギャラリーのサマーパビリオン、北鎌倉に建設中の住宅やNew Museum、ロレックス・ラーニングセンターのプロジェクトの話へと進みます。
最後に氏は、以下の二点から建築を考えていると強調します。
・プロジェクトごとの機能から
・環境との関係性から
講演から、氏の建築への飽くなき熱意と興味を感じました。
また、都市との関係性を特に重視していること、「人が使う」ということを特に重視しているため、とにかくプロジェクトの機能を読み解くことを重視しているということを、講演の内容からも強く感じました。
そして、メリットと思えることもそうでないことも、特徴的なことを最大限に活かす、ということにこだわっていることが印象的でした。
十和田市は、美術館が開館してまもない頃は、美術館の存在を大きく感じましたが、最近特にアートを起点にしたまちづくりが進んでいるように感じてました。
それは、もともと街全体をアートでまちづくりを進める、というものがあったからだということを知り、そのような点から見ると、美術館開館もそれを進めるのに大きく機能しているとわかりました。
また、建築としての美術館も、他の美術館に比べてかなり特異性がありましたが、講演を聞いて、なるほどと納得しました。
美術館だけではなく、官庁街通り、そして十和田の街と、もっと大きな視点で十和田の街を見る必要があるとわかりました。
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