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2009-01-03

Cafe80mm

キャロットタワー
2008年の年末、三軒茶屋のキャロットタワーで行われた、秋田道夫さん(プロダクトデザイナー)と萩原修さん(デザインディレクター)のトーク「Cafe80mm デザイン話とお茶」を聞いてきました。


お二方が交わることは、おそらく今まで無かったと思います。
お二方とも共通する点がありそうなのに何かが違うので、聞く側の立場からすると、そんなお二人がどのようにかみ合うのか、そこが興味の最大のポイントでした。
「lifestyle design」秋田さんはそのようなことばを使っておられますが、萩原さんもテイスト等の違いこそあれ、普段の生活の中でデザインを考えておられるという点で、共通していると思います。
だからでしょうか。
予定していたトークの時間を過ぎてから、さらに熱いトークが繰り広げられました。
自身のデザインについて
デザイナーの仕事では、結果的に作ったものからその人のものが見えてくるけれど、クライアントの言うとおりに仕事をしていると、そうはならなりません。
秋田さんのデザインは、しっかり「らしさ」が出ているように思われるけれど、実際は違うのだそう。
例えば、一番最近の仕事の「primario」では、細かい寸法の指示等は無く、工場の人の判断に委ねられていいます。
だから、まずは何をすることがその会社にとって良いか、相手の可能性の中でできることを考え、そしてデザインの基本形を提案しているのだそう。
また、「買う時の『何か』」と「使ってみての『何か』」は違うもの。
買った時は良く思っても、使ってみたらそうでもなかったということもあります。
そういったことから、売り場で一目惚れして買ってもらうより、何回か見て、半年くらいたってから買ってほしいとおっしゃいます。
また、普通は買ってもらうための記事が多いけれど、秋田さんのプロダクトでは、買って使った人がブログで紹介することが増えてきており、珍しいことなのだそう。
これは、何度も見てから買ったからこそ、レビューを書く人が多いのかもしれません。
デザイナーについて
今は、プロダクトデザイナーになって、デザイン家電のようなものを作りたい人が多いけれど、工業デザイナーになりたい人は少ないのだそうです。
けれど、秋田さんは元々工業デザイナーの方で、現在でも信号機のような産業機器もデザインされています。
その仕事を通し、そういった仕事をされている方でもスポットライトがあたる可能性を示したいのだそうです。
また、デザインは生活空間や仕事場、多くの場所で多くのものに求められます。
家電や雑貨類は、デザインの対象の中ではほんの一部にすぎません。
だからこそ、私たちの社会をよりよくするためには、そういった何でもないようなモノでも、優れたデザインであることの方がよっぽど重要だと思いました。
良いデザインを入手しやすく
良いデザインを適正な価格で、売り場を選ばないこと、秋田さんはこの2点を重視しているのだそうです。
良いデザインのものは、これまでは高価でした。
しかし、安くても良いデザインがあれば、当然そちらの方が良い。
例えば、ドウシシャから昨年秋に発売された坪井浩尚さんデザインのmiddleという加湿器は、デザインが良いうえ、価格が手ごろなので、ものすごく売れているのだそう。
メーカーは、いかに高く買ってもらうかを考えているけれど、プロダクトデザイナーが本来の考えで売ることができれば、広告代理店は必要なくなるかもしれない。
自己プロデュース
地味に仕事していても良い仕事は必ずしも来ないので、自己プロデュースが必要だと言います。
書く、話す、それぞれやり方は違えど、何らかの手段でメッセージを発信する。
特にメーカーでは広報を通さなければならないので、デザイナー自身の生の声は発信されにくいと思います。
ただ、デザインしたご本人だから想うこと、作るうえで考えた点、悩んだ点、多々あると思います。
そういった声が発信されることで、僕は企業にとってはマイナスではなく、むしろプラスにはたらくこともあると思うのですが。
いずれにせよ、僕自身も自己プロデュースがこのままで良いかは、一度考えなければと思いました。
トークは、すごくディープで熱いものでした。
そして、あらためて秋田さんのlifestyle desingの深さを垣間見たように思います。
追記:
トーク終了後、数人で飲みに行った時のメモ
「戦後の教育で、美術と技術が別れて教えられるようになった」

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コメント1件

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