名刺を活版印刷で

活版印刷での名刺、先日も作らせていただきました。

いつもは名前や会社名と住所等の文字の大きさは変えるのですが、今回は依頼者のご希望で、初めて全てが同じ大きさの文字で作りました。
印刷所の職人さんも、同じサイズでの名刺は初めてだったようで、レイアウトを聞いて最初は「えっ?」。
でも、実際刷ってみると、「こういうものなんだと思う」と。
刷ってみないとわからないものだし、僕はパソコンの文字ではなく、活字だから良く見えたのもあると思っています。



また、文字によって擦り減って印刷すると太くな出たり、高さが異なり薄く出たりする文字があるのですが、同じ大きさだと、その小さな違いが刷った時にとても気になることがわかりました。
シンプルなだけに難しい。
そのため、本番の印刷を行うまでに、何度も調整しました。
今回は今までで一番かもしれません。

最初はいつもと同じく、印刷する位置の調整から始まります。
写真の版、これは名刺のサイズに組んでいるようですが、アバウトで適当です。
この版を印刷機に取り付けた後、名刺の紙に刷って縦と横の位置を調整します。
僕も、コンマ数ミリでお願いします。
名刺が小さいので、その小さな差がとても大事です。
嬉しいのは、職人さんもそれに応えてくれることです。
今回は、最初の状態から0.2ミリ下に下げました。

その後は、全ての文字を出来るだけ同じ濃さ、太さで印刷するために調整します。
薄かったり細く出ている文字のところだけに薄い紙を小さく切って、ベロで版に貼って活字の高さを上げ、刷って確認します。
それでも薄い時は、また版を外して紙をもう一枚足してみる。
すると隣の文字が薄く出たりして、さぁどうしよう。
そんなことの繰り返しです。

今回は、文字が同じ大きさで調整に繊細さが求められ、何度も版を印刷機から外したため、ベロで付けた紙が外れて、それに気付かず印刷したら、「あれ?さっきやったのに薄く出てる」とか。
さすがに僕も最後の方は「大差ないから、難しければこれでも良いですよ」と言ったんですが、「だめよ」と。
何度も何度も試し刷りをして本当に大変でしたが、それでも最高のものを刷ろうとするその姿に職人魂を見ました。
そうやって本刷りまでに準備を行うのですが、本刷りの際も神経を使います。
印刷している間、インクがかすれてきていないか、版が高い文字の部分が裏写りしていないか等、5枚に1枚くらいは確認します。
50枚くらい刷ったところでインクを足します。
そうやって刷るので、100枚のなかで、最初に刷ったものと最後に刷ったものは仕上りが違います。
そんな一連の作業を今回も見て、活版印刷で刷る名刺は、機械で均一な品質で出てくるものと違い、1枚1枚が作品のようなものだと思いました。

どうしても、イベントやパーティーのような社交場では、たくさんの方と流れで名刺交換をすることもあります。
そういう時には、活版印刷の名刺はもったいないです。
でも、そうじゃない時もあります。
初対面の方と最初にやりとりするのは名刺です。
55×91mmの小さい紙ですが、その小さい世界にその人を感じるものです。
たかが名刺、されど名刺。
良い出会い、大切な出会いには、是非とも活版印刷の名刺を使っていただきたいです。
少なくとも普通の名刺の倍はしますが、それだけの価値はあります。
ご相談、お待ちしております。