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2008-11-04

旧日向別邸

旧日向別邸_5
旧日向別邸は、ブルーノ・タウトが日本に残した唯一の建築物。
相模湾を見渡す急斜面の崖地に面し、上屋は銀座和光や東京国立博物館本館の設計で知られる渡辺仁が設計。
上屋の前に広がる庭園の下には、離れとなるコンクリート造りの地下室が。
この部屋をタウトが設計しています。
(一部修正)


見学は、完全予約制です。
1回につき10名で、70分程度。
まず、上屋の居間でタウトに関する映像を見て、知識を深めてから地下の離れを見学します。
幸運にも、この日離れの説明をして下さったボランティアガイドの方は、研究熱心な方だそう。
私がデザイン系のものであることを告げると、詳しく説明をして下さいました。
タウトの建築作品は、日本にはほとんどありません。
それは、日本の建築家が嫉妬したからではないかと言います。
ゆえに唯一現存するこの建物は、とても貴重な建物です。
そしてこの建物は、一見すると普通の民家に見えます。
また、崖に沿って建っているので、下からは街並みが変わった今でも見えないそうです。
(特別に、地下室の窓から顔を出して見させていただきましたが、本当にそういう建物には思えません)
当時多くの人が、この建物を探しまわったというエピソードも残っています。
この建物は、現在の清水組が施工したものだそうです。
そして、タウトは一からこの地下室を設計したのではなく、既に出来ていたものをリフォームしたのだそうです。
ただし、リフォームと言っても、やはりそのポイントがすごい。
まず設計の条件として、桂離宮の施主と設計者の関係と同じく、「御催促なき事」「御助言なき事」「御費用御構ひなき事」の3つを、施主の日向利兵衛に求めたと言います。
(茶室に対しては口を出したため、タウトは後で不満を文章に記したそうだが)
地下に降りる階段の幅は30センチ広げ、居間へのアプローチの仕方を、階段からまっすぐだったのを塞ぎ、隣のコンクリートの壁を取り払い、そこに螺旋状の段を作っています。
このサイトで、上の写真のあたりです)
トイレの位置も、その段があった場所(上の写真右側)から奥(上の写真右奥)の静かな場所に移動させています。
壁には、壁と一体となったワインセラーや電話収納スペースが作られていますが、隠し扉のようで言われなければ気付きません。
(上の写真右端の、濃い色の木の部分に、ワインセラーがあります)
真ん中に位置する洋間と上段の間の段は、蹴上げが一段置きになっています。
このサイトの写真の部分)
それは、腰掛けて窓からの景色を見れるようにとの配慮。
ほかにも、前川國男の自邸が建築の教科書であるように、この建物にも多くの学ぶべき要素が凝縮されているようです。
内装材の選定も徹底していて、天井は総切り貼り、木材も暑さ・寒さ・湿度に強いチーク材などが使われています。
2008年7月に、ベルリンにあるタウトの建築作品である4つの住宅団地が世界文化遺産に指定されたことを期に、ドイツからの見学者も増えているそうです。
そして、建物の随所に見られる日本の素材の素晴らしさを見て感動するそうです。
しかしながら、現状の日本では、そのような技術は大切にされていません。
そういったものを使わなくなった理由は、「安く」「早く」仕上げることを重視したからではないか、と言います。
当然ながら、良い材料、良い工法で作れば、それなりの費用がかかります。
しかし、これからの社会のあり方を考える上で、過去から学ぶべきものは多いと気付かされます。
入場料は300円と、とてもお安いです。
また、邸内で販売しているA6版のガイドブックは100円と安く、しかも綺麗な装丁で、タウトのこの建築を愛する人たちの想いが伝わってきます。。
この建物は、一般の方からの寄付があり、熱海市が取得して平成17年から一般公開されているのだそうです。
こういう善意を大変嬉しく思うとともに、これからも大切に保存されてほしいと思いました。


旧日向別邸_1
旧日向別邸_2
小道に入り、上っていきます。
旧日向別邸_3
ありました。
下ります。
旧日向別邸_4
旧日向別邸_6
旧日向別邸_7
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まずは予習。
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まどから見えるお庭。
この下がタウト設計の地下室。
土は、40センチ盛っているそうです。
旧日向別邸_9
旧日向別邸_10
旧日向別邸_10


この建物の隣は、隈研吾さん設計の企業のゲストハウス「海峯楼」があります。
こちらも、贅沢な空間と言えば贅沢でしょうか。
旧日向別邸_11
旧日向別邸_12

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